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トランスジェンダーとトイレ/更衣室

考える

 

これと似たようなことを、友人に言われたことがある。

「女のふりした男が、女子トイレに入ってくる可能性もあるよね」。トランスジェンダーのトイレ利用についての一言。

確か、そんなような言い方だったと記憶している。

正直、最初それを聞いて、腹が立った。

言わんとすることはわかるけれど、「女性のふりして女子トイレに入ろうとする男性」と「トランスジェンダー」の話を混合するのはちょっと違う。

何に腹が立ったのか、いま振り返ろうとしてみるのだが、具体的に説明するのは難しい。

話が若干刷りかえられていると感じるからなのだろうか。

トランスジェンダーの視点が、完全に消えてしまっているからなのだろうか。

よくわからない。

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Twitterを見ていると、的外れなことを言っていたり、これは偏見じゃないかなと思うコメント、意見を目にする。でも、普段はスルーする。相手にしない。

ひとつひとつ指摘するには時間が足りないし、筋の通った議論をするなら、Twitterではやらないほうがいい。いくら言葉を丁寧に繕っても、場所と機会を間違えると労力を磨り減らすだけだ。やめたほうがいい。

しかし、橋本徹さんの場合は、政治家として自身の考えを発信している立場なので、ブログの記事でちょっと言及しようと思った。

 

テーマは、「トランスジェンダーのトイレや更衣室利用」について。

トランスジェンダーとは、平たく言うならば「心の性別と身体の性別の間にずれがある人」のことだ。FtMとはFemale to Maleでトランス男性、MtFとはMale to Femaleでトランス女性。外見や服装を自分の心地良いと感じる性別にあわせている人もいれば、そうでない人もいる。また、手術やホルモン治療を行う人もいれば、それを望まない人もいる。

Xジェンダーと呼ばれるカテゴリーも存在していて、こちらは「男性とも女性とも言い難い」と思ってる人だったり「男性でも女性でもあるかもしれない」、「対人関係や気持ちの持ちようによって変化するからなんとも...」「そもそも男女でジャッジしたくない」など、定義は完全に個々人に任される。未知数をあえて言葉にしたのがXジェンダー

性同一性障害という言葉があるが、これはいわゆる病名。なんらかの治療を希望するトランスジェンダーが、病院に名前をつけてもらうのである。

だから、トランスジェンダー性同一性障害ではない。

ちなみに、トランスジェンダー=同性愛者と勘違いをする人がいるけれど、それはちょっと違う。トランスジェンダーのゲイやビアンもいる。

jamsponts.hatenablog.com昔、パラダイムについて記事を書いたので、なんだか頭がこんがらがってきた...という人は、ちらっと参考にしてください。

 

さて。

トランスジェンダーが、日常的に抱えうる問題のひとつが「トイレ・更衣室」。

分析しようと思ったけど、これは実に難しい。

心の性別。これはもちろん、アイデンティティの問題ともいえる。

私がこうである、という自己決定に対して、誰も何も文句は言えない。心の性別を尊重するということは、「私は女性です、だから私は女性用トイレを使いたいです」という意見を尊重するということに等しい。

橋本さんは、ここで異を唱える。

心の性を基に男女どちらのトイレや更衣室も選べる権利まで認めるオバマ氏達の考えには反対。そんな権利を認めたら見かけは男性の人と一緒に着替えたくない女性の権利はどうなるのか。

よし、想像しよう。

ある会社で、トランスジェンダーMtFが働いている。彼女は、会社ではカミングアウトを一切しておらず、日常的に男性用スーツを着用し、男性社員として働いている。

彼女は体毛やひげが濃く、声も少し低いため、見た目だけだと男性に間違えられることが多い。手術やホルモン治療もしていない。しかし、自分のことは女性だと思っており、できれば女性用のトイレ、更衣室を利用したい。

しかし、彼女は、ほかの女性社員に対して普段からひどく気を遣っていた。自分が女性用のトイレや更衣室に顔を出すことで、彼女たちを怖がらせたり、驚かせたりしてしまうのではないだろうか。それはとても申し訳ない。だから、絶対に女性用のトイレや更衣室を利用することはできない。彼女は今日も、仕方なく、男性用トイレに入り、立ち小便をする男性社員から必死に目をそらして、個室トイレに駆け込む。出勤時と退社時は、できるだけ人目を避けるようにして、更衣を済ませる。ほかの男性社員に自分の身体を見られるのは苦痛だし、彼らの身体を見るのもまた苦痛だった。

....あれ。

ここまで妄想を繰り広げる中で、気がついたことがある。

きっと、今後、彼女は女子トイレにも女子更衣室にも入らない(入れない)、ということだ。

だって、彼女は会社ではカミングアウトをしていなくて、男性として社会的生活を送っていて、女性社員に対して過敏なまでに気を遣っている。(もちろん、このケースの場合の話。)

そんな彼女が、突然意を決して「女子トイレ/更衣室を使おう」と思うだろうか?

ちょっと、現実的には難しいのではないだろうか。

まずは会社の同僚の方や上司の方に、少しずつカミングアウトをして、自分の困っていることを打ち明けるところからスタートするだろう。

服装規定についても、自分の性別にフィットできるよう、相談が必要かもしれない。

トイレや更衣室は重要な問題なのだけれど、彼女にとってもっと大切な問題が、まず向き合うべき問題がたくさんありそう。

逆に言えば、そういった「まず向き合うべき問題」をひとつひとつクリアし終えたころには、トイレ/更衣室問題も、それなりに解決の方向にもう向かっているのではないだろうか。

もちろん、それすらできない職場環境だって、たくさんある。

www.huffingtonpost.jp経産相で、同様のケースがあったことを思い出した。ここでは細かい説明はカットする。

橋本さんの言う「見かけは男性の人と一緒に着替えたくない女性の権利」まで妄想を広げる予定だったのだが、実際はそこまで妄想できなかった。

そして、また声が聞こえてくる。(とする)

「職場や学校ならまだしも、公衆トイレとかはどうなるのさ」

なるほど、公共施設におけるトランスジェンダー利用ですね。

誰もが使える施設が公共施設。駅やショッピングモール内のトイレなどが良い例だろう。更衣室は、あまり公共で利用するタイプのものは、日本にはないかな。更衣をするのであれば、トイレで済ませられるし。

誰もが使える施設ということは、もちろんある程度の犯罪やトラブルのリスクも高まると言える。性犯罪や置き引き、暴力などは予想しておかないといけない。

ただ、それはトランスジェンダーの立場からしても同じ。ではないだろうか。

あと、もうひとつ言葉足らずのまま指摘するならば、見かけがどうであろうと、トランスジェンダーと聞いただけで嫌悪感を覚えて、トイレや更衣室を共有したくない人たちもいるということ、その問題の深刻性を指摘したいと思う。

見かけを男性OR女性にしたところで、「結局のところあなたはトランスジェンダーなんでしょ」というトランスフォビアに片付けられてしまう。その可能性も十分にあるわけで。

話は難しい。